僕は君の帰りを待つ犬みたいに、人生を歩んできたかもしれない。変わらないから、そこまで何かに執着することはないけれど、あなたと生きてきた思い出を思い出すことぐらいは、許して欲しいんだ。大雑把な計測で構わないから、この世界への戻り方を探ろう。一緒にあの世界へ還ろう。数センチの距離は、広がるばかりで、見えない期待に嘘をついて。ベランダから覗いた虚偽。慣らしている線香花火が、後押しする運命。それが正解なのかも知らないで、少しずつ僕たちは、幸せな運命から遠ざかっていく。
遠い昔の話、何を期限として、僕たちは生きていたのだろうか。いつまでも、心には自分なんて、という言葉が滲んでしまうから、体も小さくて一人きりの想像なんだ。僕らは、毎日話をして、運命を手繰り寄せてきたんだ。忘れないところから、夜の戸口を少し叩いて、誰かがそこに残した幸せのかけらを啜っている。思い出せないところから、心の隅に置いておく言葉。
そろそろ何か、未完が、だんだんと吹き出しに声を上げていく。空に段々と溶けて行く狭いところで、糸が泣いている。仮に負けたとしても、それは小さな芽吹きが澱んだだけなんだ。心の色や形が、みたことのない区切りから心が流れていた。声はいつも上向きで届いている。何度も何度も、僕のことを見ていては、言葉を並べる。街路樹はきっと、修羅の道。水平線が見える海こそが、僕たちの唯一の自由なところなんだ。それは愛、それは希望。
幾度となく根源を見つめてきた。仮に夢が何を選んだとしても、僕は生きて行くだけ。何度も答えを探すけど、何者でもない僕だから、愛されている根拠なんて何一つとしてないんだ。愛される言葉を探しては、それを空に浮かべてみる。半分まできた所で、前世は通り過ぎた。半分だけ、力を入れて何かを探している。それは言葉ではなくて、心。
何か色が付いていれば良い。分かりやすく、目印があればいい。もう長いこと見つめてきたから、宙に浮かぶ僕らはきっと愛なんだ。降り続いている雨で、瞬く間に一杯になってしまった。それは僕が僕である所以。それは愛が愛である所以。所々に、それなりに。絹のような君の心は、降り続いている雨で目を凝らしても何も見えやしない。一切の無駄のない動き。運命という名の歯車。揺らいでいる心の奥で、まるで宇宙が見える景色のよう。それをそっと道の水たまりに浮かべて、人生を見る。
全てはあなたが創ったんだよと、世界は僕に言う。でも僕はそれを信じられないでいる。きっとこの命が終わった後に、わかることなんだと言われても、僕はそこまで待つことはない。いっそのこと、消えてなくなってこの言葉だけがこの世界に残れば良いと思うんだ。僕が居た証は、この言葉だけで十分だから。
あなたは、この命が終わったらどうしたい。何者でもない、何かになりたいと思うのか。それとも、僕と同じく消えゆく世界と共に空になるのか。僕はそこにはいない、僕はそこにはいない。あなたもそこにはいない、あなたもそこにはいない。言葉の芸術、理解されないところに、僕は存在している。この世界で、誰も理解できない音。そんな音を詠うことができる自分が、誇らしい。