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傷跡の星雲

言葉。それはきっと、世界を模るには大きすぎるぐらいのものだと、考える日もあった。でも言葉は、僕にとっては音楽みたいなもので、音楽を奏でるってこういうことなのかなって思いながら、今日も詩を書いている。指先からなぞって出てくる文字に、不思議と心を溶かされながら、便箋に宿ったインクの恋に、思いを馳せる。覗き込んで、覗き込んで、愛の中が空っぽになって、後悔の日々が鳥になる。

小さな地球と大きな言葉。飛び込めば誰でも溶けることができる言葉の世界。僕は自由になれる言葉が羨ましい。生きる音楽が走る言葉を失うときに、悔やんでいるように思えた時があった。あの時言った言葉が、二人を離さないで絡みついてくれる。なんて言葉はいたずら好きなんだと、二人で笑ったことがあった。もう会わないって二人で言っていたのに、季節は変わって、僕がずっと何もかも。君を忘れないのは、君が泣いたから。この世界で、傷付いて何もかも大人になるという定理を、僕たちで、言葉で覆したい。願う未来があるから、夢なら醒めて欲しいと願うところに、また咲いた花が恋をして溢れたあの日。僕は星に願いを一つだけして、そっとこの人生を終える。人は皆大人になるという。恋しくても、恋しくても、どこにも君の声なんてなかったんだ。迷わず一つを照らせるように、一番星はあなたで居てよねと、千年前に言われたっけ。

嘘は何もないと、二人の中に降り頻る雨を思い出す。君の中には僕がいて、僕の中には君がいて、いたずらに考えている世界。満たされない心と、愛と、世界。この世界に生まれていても、僕たちは空にもう一つの心があることを、世界の誰も知らない。愛というにはまだ悲しいとしても、変わらない日々を僕は歩んでいる。

招き入れないところ、入ってはいけないところ、それはあなたの星の裏。月の裏を探索した人間は、一番星に照らされて、そのまま月に住んでいるらしい。まだ話さないで欲しいと願うから、今はまだ人生を歩んでいたい。どうか異星の住人たちには、この星が存在することをそっと秘密にしておいてほしい。遠ざかる君の名前を追いかけることができなくなってしまうから。会えなくてもいいから、僕が一番星になるから、愛という名前を、言葉をとっておいて。今ならまだわからなくてもいいから、悲しいとしても、僕が照らす空で、あなたも輝いていてほしい。

見て、今光った。忘れていた空の青さと、どこまでも続く世界の彼方。今がどんな時代だとしても、同じところから風の匂いがする。悲しさも、愛おしさも、あなたの記憶に刻むことができたなら、僕はそれで満足なんだ。僕たちの握る地図は、まだ模るところを知らない。

涙や雨、寂しさなど、澄んだ青を主なテーマに、
文章を紡ぐ作家「海野深一」の公式ポートフォリオサイトです。

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