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壊れそうな線路

平行線で終わる人生ならば、きっと僕らは言葉なんてものを発明なんてしなかったんだ。まだ足りないと世界に言い聞かせて、隣に座っている心を無視して、ここまで歴史を紡いできてしまった。でも世界は成り立っているのだから、僕は何も言わない、何も言えない。

居酒屋のホールでバイトをしていた時、人生を見た気がした。それは奥のほうに座っていた男性だった。ハイボールを片手に、少しだけ泣いているのが見えた。愛しているという言葉を言うことができなかった自分を責めた。あなたしかいないし、世界にはあなたが必要なのだと、言いたかった。早く駆け寄って、言いたかった。

僕たちの中のあなた。まだ嘘つきにしないでくれるなら、あの日のあなたにしかしがみついて居たい。抱きしめていたい。その腕は、どこにもない触れてほしい胸の傷に、だんだんと伸びてくる。あなたしか知らないのに、信じることを恐れないで僕の心に宿っていた。

不安が苦しみに代わるときがある。傷つけたりしたくなかった、季節がただ巡っていればよかったんだと、息をするのも忘れてやっと見つけた幸せは音もなくこの手を滑り落ちた。愛しているとは、なんて無力な言葉なんだろうか。私は今も、あなたしかいらないと言っている。

きっと世界、きっと世界。無意味な言葉にすら、人生を測ることを忘れてしまう心たちだから、さよならは無かった。何も言わないで消え去ってしまった。こんなに満たしておいて、最後の言葉はくれなかった。

愛してる、愛してる。居酒屋の隅に座っていた男性みたいな人がいたら、ここから愛を叫んで居たい。僕はそういう文章を綴っていたいし、包み込むような言葉でそっとそばに居たい。私から、僕から、言葉としての愛を、感じて考えて、紡ぎだして、心から信じて、そして、僕はここで生きていると言いたい。

傷跡がだんだんと癒えてくるのが分かる。心にあった傷跡が、映画のストーリーのように自然と進んで行く。だから僕たちは、無理して生きる必要なんてないんだと、僕はその時思った。くだらないことなんて考えないでいいから、弱気になって笑って、自分で笑って。揺れる、枯れる、夢の花。その花に、僕は心の奥から汲んできた水を注ぐ。

涙や雨、寂しさなど、澄んだ青を主なテーマに、
文章を紡ぐ作家「海野深一」の公式ポートフォリオサイトです。

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